お知らせ

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2026/03/31

業界の未来を拓くリーダーたち

連載企画『業界の未来を拓くリーダーたち』第3弾

AI時代のデジタルホームステージングは、何を守るべきか

Realty Bank 川上社長に聞く
「日本市場に最適化された設計思想」と、不動産広告における責任

写真:株式会社 Realty Bank 代表取締役 川上 将司氏

ホームステージングの世界に、いま大きな変化が起きている。
AIの進化によって、これまでデザイナーなどの専門スタッフによる手作業が中心だったバーチャルホームステージングは、より速く、より手軽に、誰もが使えるサービスへと進化しつつある。

一方で、その利便性の裏には、新たな課題もある。
「AI」「バーチャル」「CG」「デジタル」。一般の消費者にとっては似た言葉が飛び交うなかで、何がどう違うのか。生成AIによる画像活用はどこまで許されるのか。

日本の不動産広告において、どのような配慮が必要なのか。 さらに、リアルのホームステージングとは競合するのか、それとも補完し合うのか。

今回お話を伺ったのは、デジタルステージングを提供する株式会社 Realty Bank代表取締役の川上氏。
同社は、手軽で安価な「画像生成サービス」ではなく、日本の住宅事情と不動産広告ルールを踏まえた独自技術を強みに、デジタルホームステージングの新しい標準づくりに挑んでいる。 川上氏が繰り返し語ったのは、技術そのものよりも、その使い方と責任のあり方だった。

「AI」「バーチャル」「CG」は、似ているようで違う

まず川上氏は、一般には混同されがちな言葉の整理から話を始めた。

いわゆる「バーチャルホームステージング」とは、実在する不動産物件の写真の中にCGで家具やインテリアを合成し、実際に家具が置かれているように見せる技術。
その意味では、バーチャルホームステージングの技術的な土台にあるのがCGであり、従来はデザイナーが手作業で加工・編集し、完成画像を納品する形が一般的だった。

RealtyBank(以下「リアルティバンク」)では、こうした従来型の手作業編集をベースにしたサービスを「デジタルステージング」と位置づけてきた。

そこにAIが加わることで、人の手で一つひとつ編集するのではなく、AIが一定のルールのもとで家具配置を行う仕組みが生まれたという。

ここで重要なのは、川上氏が「生成AIによる画像生成」と、同社のAI活用を明確に分けて捉えていることだ。

ChatGPTやGeminiのような汎用的な生成AIは、元の室内写真を参考にしながらも、画像全体を新しく描き直す。
そのため、一見よく似た画像ができても、床材や壁のライン、窓の形、建具の寸法、梁、エアコンのサイズなど、現況と異なる情報が混ざるリスクがある。 一方、リアルティバンクの「デジタルステージングAI」は、元の室内写真自体は変えず、その上に家具を配置するという発想で設計されている。
つまり、元画像の構造(壁のシミに至るまで)を保ったまま、暮らしのイメージを加える。そこに、同社が考える“不動産実務に耐えるAI”の条件がある。

AIは万能ではない。だからこそ「AI任せにしすぎない」

川上氏が何度も強調したのが、「AI任せにしすぎない」という設計思想だ。

同社のAIは、多くの人が自然だと感じる家具配置を学習している。
たとえば、リビングであればソファ、テレビ、テーブル、ラグといった主要家具を、一般的に違和感のない位置に配置する。言い換えれば、「10人中8人、9人がそこに置くだろう」と考える標準的な配置をAIが担う仕組みだ。

ただし、そこには明確な限界もある。

「この位置ではなく、テレビは壁のこちら側にしたい」
「この高さ、このサイズ感、この印象に寄せたい」
そうしたクライアントからの個別の意図や細かなこだわりは、やはり人の判断が必要になる。

多くのユーザーにとってはAIの出力で十分だが、より質を求める案件や、物件特性に合わせた微調整が必要なケースでは、人の手による編集が価値を持ち続けるという。

実際、リアルティバンクではAIによる自動生成サービスとは別に、手作業編集による「プロデジタルステージング」も提供している。 AIか人か、ではない。
AIと人の協働こそが、実務に根ざした最適解であるというのが、川上氏の一貫した立場だ。

強みは「日本の住宅に合う」こと。独自AIはどうつくられたのか

リアルティバンクの競争力の核心は、日本の住宅に合わせた独自学習モデルにある。
海外製のバーチャルステージングAIは、学習データも海外住宅を前提としたものがほとんどだ。
その結果、日本の住空間では不自然な大きさのソファや、搬入が難しい家具、生活動線に合わないレイアウトが生成されやすい。
見た目は整っていても、日本の住まい方や不動産事情、日本人の一般的なインテリア感覚に照らすと、違和感やリスクが生じる。

川上氏によれば、過去のデジタルステージング案件で蓄積してきた大量のビフォーアフター画像と、
ユーザーからの修正履歴こそが、同社独自AIの土台だという。

「ここではなく、テレビはここ」「この家具サイズではなく、こちらが正しい」といった修正の積み重ねをAIに学習させることで、より日本市場に即した配置精度を高めてきた。

現在は、リビングや寝室など7種類の部屋タイプに対応し、インテリアスタイルは9種類に及ぶ。
それぞれのスタイルごとに汎用性の高い大量の家具の3Dモデルを保有している。
あえてメーカーやブランドの家具を使わないこの設計にも、実務的な合理性がある。
ブランドを指定した再現は、権利や運用の面で制約が大きい。

一方で、不動産広告において求められるのは、特定ブランドの訴求よりも、空間の使い方が
伝わることだ。
そのため同社では、現実的なサイズ感と生活イメージを優先し、誰にとっても理解しやすい表現を目指している。

なぜ生成AI画像の安易な活用は危険なのか

――不動産広告では「誠実さ」が競争力になる

今回のインタビューで特に印象的だったのは、川上氏が不動産広告におけるAI画像活用のリスクを、非常に明確に捉え、強い危機感を持っている点だ。

ChatGPTやGeminiなどの汎用生成AIが作る空間は、窓の形、壁のライン、床や建具の位置関係などが現況と異なる可能性がある。
不動産広告において、これは単なる“演出”では済まず、虚偽表示や不当表示の問題につながりかねない。

そのため川上氏は、ポータルサイト運営会社や不動産事業者とも情報共有を進めながら、生成AI画像の安易な利用に警鐘を鳴らしている。
実際、業界内ではすでに、汎用生成AIによる画像利用を控えるよう社内通達を出している企業もあるという。

一方で、単に「使うな」と言うだけでは、技術の進化には対応できない。

そこで重要になるのが、どう使うか、どう表示するかというルールづくりだ。

実際にリアルティバンクでは、(公社)首都圏不動産公正取引協議会に対し、自社サービスを不動産広告として掲載することの妥当性を適宜確認しながら、ルールに則った展開を徹底している。

また、川上氏はアメリカ・カリフォルニア州で2026年1月1日から施行された、バーチャルステージング画像の掲載ルールにも注目している。
そこでは、CG加工であることの明示に加え、加工前の画像も併せて掲載することが求められているという。


ユーザーにとっては、現況写真とステージング後のイメージを並べて見ることで、「実際の部屋」と「暮らしの想像」が自然につながる。
事業者にとっては、誤認を避けながら訴求力を高められる。

つまり、誠実さと販促効果は両立できるということだ。 川上氏は、日本でも今後近いうちに、こうした表示ルールの整備が重要になってくると見ている。
ホームステージング業界が社会的信頼を高めていくためには、技術の新しさだけでなく、説明責任のあり方まで含めて言語化していく必要があるのだろう。

価格の壁が下がり、市場は「標準装備」へ

デジタルステージング市場の広がりについて、川上氏は「価格低下が最大の転換点だった」と語る。

かつて、1枚あたり数千円から数万円していたバーチャルステージングは、AIの進化によって一気に低価格化した。
これにより、「なかなか決まらない物件だけに使う特別施策」だったものが、ほぼ全物件に導入しうる標準施策へと変わり始めている。

特にアメリカ市場では日本より数年早くこの変化が起きており、物件検討者がポータルサイト上で家具の有無やデザインを切り替えられるという体験にまで広がっているという。
そうした流れを見てきた川上氏は、日本でも今後、エンドユーザー自身が物件探しの中で内装や家具のイメージを試せる時代が来ると見ている。

すでにリアルティバンクでは、メーカーと連携して壁紙や床材、天井材のシミュレーションにも対応している。実在する商材を画像上で反映できる点も特長だ。
不動産会社が自社物件の提案に使うだけでなく、ユーザーが「この壁を変えたらどうなるか」など具体的に想像できる環境づくり、生活イメージの可視化が進みつつある。

リアルホームステージングとは競合ではない

――役割が違うからこそ、両方必要

川上氏が最後に強く語ったのが、リアルホームステージングとの関係性だった。
デジタルステージングは、しばしばリアルホームステージングの代替と見られがちだ。

しかし川上氏は、それを明確に否定する。

デジタルステージングが得意なのは、インターネット上で物件を選ばれる存在にすることだ。
写真一覧の中で目に留まり、クリックされ、問い合わせにつながり、内覧へ進んでもらう。
いわば、オンライン上での第一接点を強くする役割を担っている。

一方、リアルホームステージングが力を発揮するのは、実際に現地で物件を見た瞬間の体験価値だ。

玄関を開けたときの空気感、明るさ、香り、視線の抜け、家具の質感。
「ここで暮らしたい」と感じる決定打は、やはり現地での体験にある。

つまり、両者は競合ではなく、成約へ至るまでの異なる検討フェーズで力を発揮する補完関係にある。実際に、リアルステージング会社のオプションとしてデジタルステージングが選べる形で連携している事例もあるという。

たとえば、リビングやダイニングはリアルで見せ、寝室や子ども部屋はデジタルで補完することで予算を抑える。
そんな使い分けも、今後はますます増えていくだろう。

「リアルかデジタルか」ではなく、
どう組み合わせれば、物件の魅力と暮らしのイメージを最も伝えられるか。
その発想が、これからのホームステージングには求められている。

正しい表現が、業界の未来をつくる

デジタルホームステージングは、単なる画像加工ではない。

購入者や借り手に、入居後の暮らしを具体的に想像してもらうための手段であり、だからこそ現況とかけ離れた表現や、誤認を招く使い方であってはならない。

AIの進化によって、誰もが簡単に使える時代になった。

その一方で、何を守るべきか、どこまでを許容するのかという基準づくりは、これからますます重要になる。CG加工であることの明示、加工前画像の掲載、搬入可能な家具サイズへの配慮、日本市場に合った表現設計。

そうした一つひとつの積み重ねが、ホームステージングの社会的信頼を育てていく。

川上氏の挑戦は、便利なサービスを提供することにとどまらない。

AI時代のホームステージングにおいて、正しく伝えながら価値を生み出すとはどういうことか。 その方向性は、川上氏の実務に根ざした取り組みから、具体的に見えてくる。

(取材・文:日本ホームステージング協会 編集部)

■株式会社 Realty Bank について

株式会社RealtyBankは不動産業をAIとテクノロジーで革新することをビジョンに掲げています。我々が手掛ける「デジタルステージング」「AIチャット」は、代表の川上自身が米国の不動産業界で学んだ知識と経験を活かし、AIとテクノロジーを駆使した新しいサービスです。

HP:https://realtybank.jp/

■デジタルステージングについて

RealtyBankの「デジタルステージング」は、日本の不動産広告ガイドラインに準拠した専用AIモデルを活用し、既存の室内写真の構図を変えずに、日本の住宅サイズに適した家具を自然に配置できるサービスです。導入企業は2,200社以上にのぼり、物件ページのPVは平均79%向上、問い合わせ数も63%増加するなど、高い集客効果を実現しています。

HP : https://digitalstaging.co.jp/lp

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