お知らせ
2025/11/19
業界の未来を拓くリーダーたち連載企画『業界の未来を拓くリーダーたち』第1弾
「空間を、価値へ。」
カグカス・金保社長が語る、ホームステージング再定義の先にあるもの

株式会社カグカス 代表取締役 金保 智也氏
「不動産の価値は、築年数や立地だけで決まるものではない。その空間に、どんな暮らしが描けるか」そう語るのは、ホームステージング事業を展開する株式会社カグカスの代表取締役、金保(かなほ)氏だ。同社は近年、大手家具総合商社・関家具との業務提携を発表し、業界内外から注目を集めている。だがその狙いは単なる提携にとどまらない。金保氏の目線は、もっと先――“日本の住宅の価値観”そのものの変革に向いている。
「家具を置く仕事」から「空間をプロデュースする仕事」へ
金保氏は、「ホームステージング」という言葉をあえて再定義する。
それは家具を並べることでも、インテリアを演出することでもない。
「私たちは家具メーカーではありません。壁も床も照明も含めて、“空間全体”をデザインする会社です。ホームステージングとは、ペルソナの人生を見つめ、その暮らしにとって何が必要かを形にする行為だと思っています。」
カグカスの目的は明快だ。
物件の本来持つ価値を“見える化”し、購入希望者に「ここで自分も暮らしてみたい」と思わせること。
強みのひとつは、データに基づくマーケティング力である。
カグカスでは、これまでに手がけた8,000件を超える案件データを蓄積し、地域や価格帯、家族構成などをもとにペルソナを細かく分析し、それを保管している。
「感覚やセンスだけではなく、数字と実績から導く“売れる空間設計”が私たちの仕事です。海外のやり方を真似るのではなく、日本の文化に合った方法を突き詰めたい。」
金保氏の言葉には、経営者としての矜持と市場への冷静な分析が同居している。
「すべて正社員」──現場に立つプロフェッショナル集団
カグカスの現場では、企画から納品、撮影までを一人の担当者が一貫して手がける。
営業、現調、プランニング、ステージング…これらの工程を分業化せず、一人がすべてをやり切る「縦割り」型の体制をとるのだ。
「自分の手で最後まで仕上げるからこそ、仕事に責任を持てる。良い意味での“属人化”がプロを育てます。」
そして社員はすべて正社員。アルバイトも業務委託もいない。
その理由を尋ねると、「本気で向き合う人とだけ、仕事がしたい。」と答える。
「本気で業界を変えたいと思ってやっています。そうなると、一番大事になってくるのは人、人材だと考えています。」
関家具との提携──業界を変える“共創”の一手
2025年、カグカスは大手家具総合商社・関家具との提携を発表した。
そのニュースは業界の注目を集めたが、金保氏にとっては自然な流れだったという。
「家具をつくるプロ」と「空間をデザインするプロ」が、それぞれの専門性を掛け合わせる。
その化学反応が、不動産の価値を底上げし、ひいては住宅業界の在り方を大きく動かしていく
――金保氏はそう確信している。
不動産の“常識”を問い直す──中古住宅にこそ価値を
「新築当時はその時代の生活スタイルに最適だった住宅も、時と共に求められる用途は変わってきます。何も手を加えなければ価値は次第に下がってしまいますが、現在のニーズに合わせてリノベーション工事を行い、空間を生まれ変わらせることで、その価値は再び向上するはずです。
金保氏が問題視するのは、日本の中古住宅市場の価値評価だ。
「ホームステージングは、物件の“価値を伝える力”を持っています。その空間でどのような生活ができるのか、それが正しく伝われば、住宅の価値は上がる。私たちはその力、ホームステージングを進化させたいと考えています。」
リノベーションと人材育成──未来へ続く現場づくり
カグカスは、前途に挙げた課題を解決するためリノベーション事業をもう一つの柱として拡大中だ。
しかし、そこには新たな課題もある。
「業界最大の壁は“職人不足”です。だからこそ、若手の職人を育成していく取り組みも視野に入れている。ただリノベーション工事をできるようにするだけではなく、デザインも理解できるクリエイティブな職人を自社で育てたい。」
金保氏の考えは、こうだ。
リノベーションの仕事を増やすことで、職人たちに工事の仕事を振り分けられるようになる。豊富な仕事量が経験になり、単に作業するだけでなく、間取りの提案や家具の提案までできる“クリエイティブな職人”を育てる。
そうした職人は今後ますます求められ、より高い収入も得られるようになる。そうした新しい時代を自ら作っていきたい。
福岡から全国へ──“持続する業界”をつくる
カグカスが描く次のステージは、全国展開だ。
関家具の本拠地である福岡を、求められる空間づくりの実験場として位置づけ、そこで生まれた成功モデルを各地へ展開していく。
将来的には、フランチャイズのような形で地域のステージャー(インテリアコーディネーター)が案件を受け取れる仕組みも視野に入れている。
「我々が仕事をつくり、各地のプロが受け取る。仕事が生まれ続ける仕組みを業界全体で作っていきたい」
出産や子育てで一度現場を離れたインテリアコーディネーターが再び活躍するケースも増えている。
「ホームステージングという仕事があることで、経験とセンスを持つ優秀な人たちが、またこの世界に戻ってこられるようにしたいと考えています。」
カグカスの挑戦──循環し、未来を変える
カグカスが目指しているのは、単なる「見栄えのいい空間」づくりではない。
その挑戦は、不動産の価値を上げることだけを目的としたものではなく、空間を通して“住宅への価値観そのもの”を変えていく試みだ。
そこに働く人、学ぶ人、家庭を支える人たちが、誇りを持って関われる業界をつくる。
一度現場を離れた人が再び戻り、経験を活かして新しい仕事を生み出す。
人を育て、働く場を生み、社会の仕組みそのものを育てていく――。
それこそが、同社が掲げる「空間を、価値へ。」という言葉の真意である。
カグカスには、ホームステージングという言葉のその先に、日本の住まいの未来が見えている。
(取材・文:日本ホームステージング協会 編集部)
■株式会社カグカス について

カグカスはホームステージングを通じて物件の魅力を可視化し、不動産仲介会社とともに「暮らしの未来」を描いてきた企業。大阪府豊中市に本社を置き、金保智也氏が代表を務め、大阪・東京・名古屋・福岡を拠点に事業を展開している。ホームステージング事業とリノベーション事業を軸に、数字や条件だけでは伝わりにくい不動産の価値を空間体験として届け不動産業者様の利益最大化に貢献している。 HP: https://kagkas.com/
